2025年4月15日
2025年4月15日
はじめに
本のレビューを書く際に表紙画像を使用すると、どの本についてのレビューであるかが分かりやすくなります。しかし、他者の著作物として表紙画像を使用する際は、著作権法を理解しておくことが重要です。この記事では、本のレビューで表紙を利用する際の注意点を考えます。
本の表紙は著作物である
本の表紙はデザイン、イラスト、写真などの要素を含みます。著作権法第2条では、著作物は以下のように定義されます。
著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
本の表紙は、その本の思想や感情を表す美術作品であるため著作物です。
つまり、本の表紙を利用したい場合は著作物の利用ルールに従えばいいことが分かります。
著作物の利用方法
著作権で保護されている著作物を利用するには、主に2つの方法があります。
著作権者の許可を得る
レビューしようとしている本の著作権者と連絡を取れる場合は、著作権者から直接許可を得るのが最も確実な方法です。しかし、ほとんどの場合は第三者が書いた本をレビューすることになるでしょうから、この方法は現実的ではありません。
著作権の制限規定を利用する
著作権法では、第30条(私的使用のための複製)などの条文で、著作権が制限される状況が説明されています。著作権の制限規定のうち、第32条(引用)では著作物を引用して利用できることが示されています。
第三十二条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
本のレビュー(批評)においては、引用ルールに従うことで表紙を引用できることが分かります。
著作権法における引用ルール
著作権法では、必要な範囲内で作品を引用することに加えて、その引用が公正な慣行に合致することを求めています。しかし、条文では公正な慣行について具体的に説明されていません。そこで、表紙を適切に引用するための条件を、判例を基に整理します。
引用に関する有名な判例の1つがパロディ・モンタージュ写真事件です。この事件の判例により、著作権法における引用の要件がより明確になりました。その引用が「公正な慣行」であると認められるための条件は以下の通りです。
明瞭区分性
作品を引用する人の著作物と、引用される人の著作物を明瞭に区別できる必要があります。表紙のような画像であれば、引用する作品と自分の作品の間に境界線を付けたり、引用部分を枠で囲んだりすることで視覚的に区分することが求められます。また、参考文献として、レビューした本(引用した表紙)の情報を明示することで引用部分がより区別しやすくなります。
主従関係
作品を引用する人の著作物と、引用される人の著作物の間に主従関係が必要です。つまり、引用する人の著作物が「主」であり、引用される人の著作物が「従」の関係にある必要があります。本のレビューにおいて表紙を使用する場合は、レビューの本文が中心であり、表紙画像はあくまで「どのような本であるか」を示す補助的な役割であることが求められます。
本のレビューにおける表紙の引用ルール
これまでの情報を踏まえると、本のレビューにおける表紙の引用ルールを以下のように定義できます。
- レビューとして成立する程度の情報を、レビューの本文に記載する
- レビューの内容を補強するために表紙画像を使用する
- 例: サムネイルやヘッダーとして使用する、レビューした本(引用した表紙)の情報を参考文献として記す
- 表紙画像がなくてもレビューとして成立するようにする
- 表紙画像の解像度を過度に大きくしない