フィードバックの価値と限界

フィードバックの利点と課題から、効果的な活用方法を探ります

投稿日: 2024年10月17日

最終更新日: 2024年10月20日

初めに

フィードバックを活用するIT企業は増加傾向にあります。Qualtrics XM Instituteの調査によれば、顧客体験 (CX) 管理で先進的な企業 (CXリーダー) の78%、遅れをとっている企業 (CXラガード) の36%が、イベントを基点とした顧客からの迅速なフィードバック (Interaction feedback) は組織変革に効果があったと回答しています。

この背景にはIT技術の発展があり、中でもインターネットの普及、スマートフォンの普及、ビッグデータの活用は、フィードバックに対する組織の考え方に大きな影響を与えました。

2000年ごろにインターネットが普及すると、ユーザーと企業が繋がるための経路ができ、オンラインプラットフォームが登場しました。これにより、国や地域を跨いだフィードバックの収集が簡単にできるようになりました。

続いて、2010年ごろにスマートフォンが普及すると、モバイルアプリケーションが急増したことで、ユーザーの元に情報が届けられるまでの時間が短縮されました。これにより、リアルタイムでフィードバックを収集できるようになりました。

さらに、現在ではビッグデータの活用が進み、大量のデータを処理できるようになり、機械学習を用いた高度な分析を誰もが行えるようになりました。これにより、フィードバックを用いた予測分析ができるようになり、サービスやプロダクトの機能をより早く改善できるようになりました。

これらの事実は、フィードバックには大きな価値があるということを示すものです。しかし、フィードバックには限界があるということも、もう1つの重要な側面です。

フィードバックの限界

ユーザーからのフィードバックには注意すべき4つの問題があります。

  1. 具体的な情報が不足していること
  2. 定性的な評価であること
  3. 暗黙的なニーズが含まれていること
  4. ニーズの表現が曖昧であること

具体的な情報が不足していること

例えば、「アプリの動作が遅い」というフィードバックでは、どの機能が遅いのか、どのような状況で遅くなるのか、どの程度の遅さなのかが説明されておらず、問題の詳細や再現手順が分かりません。

定性的な評価であること

例えば、「Webサイトが使いにくい」というフィードバックに含まれる、「使いにくい」という評価は主観的なものであるため、本当に使いにくいのかどうかが不明確です。

暗黙的なニーズが含まれていること

例えば、バンキングアプリに対して、「取引履歴の検索機能が欲しい」というフィードバックが届いたとします。この場合は、そのフィードバックには「ユーザーの取引履歴に不正アクセスされないような仕組みを作ってほしい」という暗黙的なニーズが含まれています。

ニーズの表現が曖昧であること

例えば、「スマートフォンのバッテリー持ちを良くしてほしい」というフィードバックには、具体的な解決策が含まれていません。そのため、開発者は「バッテリー容量を増加させる」、「省電力機能を強化する」などの様々な解決策を考え、その中から最もユーザーのニーズを満たすものを探し出す必要があります。

エンジニアとしてやるべきこと

ユーザーからのフィードバックには多くの問題があるものの、それを適切に解釈すればサービスやプロダクトの機能を改善でき、ユーザーの期待に応えられるだけの価値を生み出せます。では、エンジニアには何ができるでしょうか?私は、デザイン思考とデータ分析を組み合わせることでこの課題を解決できると考えます。デザイン思考とは、人々のニーズを深く理解し、創造的に問題を解決する方法です。デザイン思考の具体的な流れは以下の通りです。

  1. ユーザーの気持ちを理解する
  2. 根本的な問題を見つける
  3. 多くのアイデアを出す
  4. 素早くプロトタイピングする
  5. 実際に試してみて改善する

この方法を活用することで、ユーザーの視点に立ってサービスやプロダクトの問題を分析できます。ユーザーの視点でフィードバックを解釈すると、表面的な問題の背後にある本質的なニーズを探ることができ、より良いアプローチを見出すことができます。

さらに、データ分析を行うことで、ユーザーの主観的な評価を、測定可能な指標に変換できます。例えば、「使いやすさ」という指標を「タスクを完了するまでの時間」や「エラーの発生率」という指標に変換できます。このような測定可能な指標は客観的であるため、フィードバックによる改善の効果を測定するのに役立ちます。