投稿日: 2024年11月25日
最終更新日: 2024年11月26日
初めに
チームの成長のためには何が必要でしょうか?よく言われるのはリーダーシップです。では、リーダーシップとは何でしょうか?私は、大きく分けて2つのリーダーシップがあると考えています。
1つ目は、カリスマ性を重視したトップダウンの意思決定を行うことで、指示や命令によってチームを管理するリーダーシップです。従来のリーダーシップ観がこれに当たります。しかし、このリーダーシップにはいくつか問題があります。
例えば、リーダーのカリスマ性が全てを決めるため、常にリーダーに依存してしまいます。そのため、リーダーが不在になるとチームとしての生産性が低下します。また、現在のリーダーの後継者を育てるのが難しいという問題もあります。トップダウンの体制では、リーダーが多くの物事を正確に判断しなければならないため、それに対処できる高い能力が必要です。
2つ目は、チームメンバーが活躍できる基盤を作り、チームの自律性を高めるリーダーシップです。このリーダーシップを備えたリーダーは、情報共有の仕組みを作ったり、意思決定プロセスを明確にしたり、チームメンバーに適切な権限を与えたりすることで、それぞれのメンバーが自律的に行動するように促します。
チームの自律的な成長を促すリーダーシップを取り入れることで、適切な権限の移譲によってリーダーシップを分散させられます。そのため、特定のメンバーがいないときに生産性が大幅に低下する事態を回避できます。また、多様な視点から事業を分析できるため、より多くの問題を見つけられます。
どちらの場合にも利点と欠点が存在します。自律的な成長を促すためにはどのような行動が必要かを考察します。
規律訓練型権力と環境管理型権力
従来のチームマネジメントは「規律訓練型権力」によるものです。規律訓練型権力とは、相手を直接的に監視し、罰則を与えることで相手の行動を管理する権力です。
例えば、学校では出席が取られますし、会社では勤怠管理システムによって業務内容が記録されますし、街では監視カメラによって普段の行動が記録されます。相手に「誰かに監視されている」と思わせることで相手の行動を管理できます。
従来のチームマネジメントでは指示や命令によって規律が作られます。人々はその指示や命令に従うと評価され、従わなければ評価されません。それを繰り返すことで相手を擬似的に自分の監視下に置くことができ、相手の行動を管理できます。
一方で、新しいチームマネジメントは「環境管理型権力」によるものです。環境管理型権力とは、特定の目的に適した環境を作ることで、相手の行動を誘導する権力です。規律訓練型権力との大きな違いは、行動を自分で選択するかしないかです。規律訓練型権力の場合は、他人が行動を選択しますが、環境管理型権力の場合は、自分自身で行動を選択します。
例えば、SNSについて考えてみましょう。SNSのUIの1つに無限スクロールがあります。これは、フォローしているアカウントの投稿を閲覧するのに適したデザインであり、ユーザーはそのデザインに従って投稿を閲覧します。さらに、ユーザーにおすすめの投稿を通知することで、ユーザーにその投稿を閲覧させることができます。
新しいチームマネジメントでは環境作りが重視されます。会社の利益を追求するために様々な仕組みが整備されます。例えば、KPIの達成状況をリアルタイムに確認できるダッシュボードを作ったり、顧客からのフィードバックを共有する方法を整備したりすることで業績を可視化します。これにより、それぞれのメンバーが業績を改善するための行動を取るようにします。
仕事に合った権力を使う
医療現場や工場での作業ミスは人命に関わることがあります。このような安全性が重視される業務に取り組む際は、指示や命令による監視が必要です。しかし、例えば現代のシステム開発では、事業を成長させるために継続的な学習と改善が不可欠であるため、チームの自律性を高め、理論の習得とそれに基づいた実践ができる環境を作ることが重要です。
最近では「挑戦できる環境」という謳い文句で環境管理型権力をアピールする企業が増えています。労働者は、この「挑戦できる環境」という言葉の意味を正しく理解し、それをどのように活用するかを考えながら働かなければなりません。もしかしたら、そこにあるのは「自由」ではなく「誘導」かもしれません。つまり、私たちがどのような環境で働くにしろ、その環境に身を委ねることなく自分の意志で真の自由を手に入れようとすることで、自分らしい在り方を実現できます。